オーラルケアを始める前に…オーラルケアで知っておきたいポイント

『歯』のメカニズム

『歯』の中をのぞいてみましょう

歯の中心には血管や神経を全身から通わせる「歯髄」があり、その外側に「象牙質」、さらに最表層は「エナメル質」という構造で成り立っています。また歯の根はエナメル質の代わりに「セメント質」が最表層を被い、セメント質と歯茎の骨はコラーゲン線維の束で結ばれ、そこを「歯根膜」と呼び、約300μmの幅を持ってまるでトランポリンのように歯を支えています。

監修:医療法人社団 林医院 林ゆき枝 先生
開業とフリーランスで矯正歯科診療。脳外科では口腔リハビリにも携わる。「食育・歯育」「姿勢とかむこと」をテーマに研究、講演活動を行う。マラソン大会ではランニングドクター®としてボランティア走もする。

『歯』の構造を知る

歯は全身からの血管や神経が通う歯髄を中心に、その外側を象牙質が被い、さらに外側を歯冠(口の中に顔を出している部分)はエナメル質、歯根(健康な歯茎であれば歯茎の中の部分)はセメント質が最表層にあります。セメント質は歯根膜という主にコラーゲン線維の膜を介して歯茎に接合しています。また、口の中には様々な菌が住んでいます。これを口腔常在菌と言います。口腔常在菌は生後間もなく口の中に住むようになります。虫歯菌は歯が生え始めてから住み始め、歯周病菌、そのほか口腔常在菌が集まって、私たちの歯の表面はネバネバな多糖体の生物膜が作られています。これを「バイオフィルム」といいます。それ自体が虫歯菌のエサにもなり、食事をしていなくても一定時間が経つと常に歯の表面に歯を溶かす酸を産生します。家庭でいえば、キッチンの三角コーナー、キッチンや浴室の排水口などに付着しているネバネバと同じ類のもの。オーラルケアは、このバイオフィルムを除去する唯一の方法です。

歯と全身

虫歯や歯周病の原因菌は、どの人の口の中にも存在し歯や歯茎の表面にバイオフィルムを形成しています。その人のオーラルケアの習慣や飲食習慣のバランスが崩れると、虫歯や歯周病が発症することから、虫歯や歯周病は「感染症」と言えます。また以前から糖尿病と歯周病の関連は指摘されています。糖尿病患者さんは歯周病が悪化しやすい、治りにくという報告が多くあります。
加えて最近の研究では、歯周病が全身の健康を脅かす可能性を示唆する報告も増えています。歯周病菌が発する内毒素は、生きた細胞に接触すると必ず炎症を起こし、適切なオーラルケアで除去されなければ複雑な慢性炎症へと移行します。このような炎症によって毒性を増した内毒素が歯茎の血管から入り、血液にのって全身に巡ることになると、その人の生活習慣病と結びついたり局所で発症する可能性がわかってきました。
噛む力、飲み込む力の弱った人が、口の中の雑菌が誤って呼吸器に入り込むことで発症する誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因として以前から問題になっていました。震災後不十分なオーラルケア環境のため被災地では誤嚥性肺炎の急増が懸念されています。
そのほか歯周病菌が血液を通して、脳卒中、動脈硬化症、心臓血管系疾患、糖尿病、低体重児出産、リウマチ、癌などの原因になりえることが報告されています。
歯垢1mg中には10の8乗~10の9乗もの最近がバイオフィルムを形成して生息しています。歯周ポケットという酸素の少ない環境でも互いに生き延び、血液にのって全身に到達しえる歯周病菌は強い生命力を持っていることが想像できます。
だからこそ、予防することが最も重要。毎日のオーラルケアは全身のためにも大切です。

日本における歯の色の意識

日本における歯の治療と言えば、虫歯や歯周病、かみ合わせなどの機能的なものがほとんどでした。以前より欧米では「白く輝く歯と整った歯並び」は身だしなみの一つとして常識。幼少時から美しい口元の意識が高められるようです。
審美的な関心の薄い日本でも、少しずつ美しさに対する欧米的な価値観が浸透してきました。ある調査では「お口の健康のどこに不満がありますか?」の問いに「歯の色」は4位でした。歯の色に悩んでいる人の割合は口臭や歯並びを悩む人を上回り、「歯が白いとその人の印象がアップする」と多くの人が回答しました。
歯磨き粉には過去2回の美白ブームがあります。「芸能人は歯が命」という流行語が生まれた1996年に美白歯磨き市場規模は200億円に達し、2003年100億円を突破しました。しかし相変わらず歯ブラシ以外のオーラルケア用品の使用率や定期的なプロフェッショナルケア受診率が低いのが日本の現状です。歯への関心を「歯の色」を入り口にしてもいいかもしれません。

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